
【多少ネタバレ】
朝井リョウの作品は、「桐島、部活やめるってよ」など映画でしか観たことなくて小説は初めてだけれど一気に読んだ。いわゆるマジな「推し活」界隈に関わって人生を翻弄される3人のお話。
実際に活動にのめり込む学生、推しの悲劇から偏った陰謀論を説く団体に関わっていく女性、サバイバルオーディション番組からデビューするグループの運営に関わる男性のそれぞれの視点から、孤立・孤独な社会の中で生きがいやつながりを求めていく様を描いている。
運営側が仕掛けるファンダムマーケティングの仕方がえぐい。ファンダムとは、推しに対して熱狂的な情熱を持つファンのコミュニティのことで、ファンダムをうまく促しながら推しの夢=ファンの夢という共創の流れを作っていく。
そこで使われるのは「物語」。
運営側のトップが言う「神がいないこの国で人を操るには、”物語”を使うのが一番いいんですよ」という言葉に象徴されるようにファンが自分事化しやすいような物語を適切なタイミングで投入することでファンの情熱を切らさないようにさせる。
ファンの生きる目的を提供しているだけだから、ランキングを上げたり、グッズをゲットするために同じCDをどれだけたくさん買わせようが気にしない。人助けのように考える運営側。不安ばかりで先行きの見えない世の中で、特に内向性の高い人間にとっては、視野を広く持つという当たり前にポジティブな生き方より、視野狭窄、推しのことのみを考えて生きた方がよいという理屈。ファンダムマーケの怖ろしさを感じたし、割と近くにファンダムを持つグループがいるので、いろいろと考えるところもある。
ただ、分野は違えとマーケティングやファンドレイジングに多少なりとも関わってきた者として、思わずメモってしまった要素も多々ある。是々非々。いや非が多いか。
専門用語がバンバン出てきたりして戸惑うけど、ホンモノの推し活人生を送っている人がどこかのブログで感心していたように、推しの気持ちや界隈の状況がとてもリアルらしい。読みながら、この作品はまず間違いなく映像になるだろうし、なるとしたら誰がどの役をやるのかまでイメージが浮かんだ。
推しのいる生活はその人にとって間違いなく幸せであるし、その場を提供する運営側の在り方次第では世界を動かす力にもなる。単なるカネ儲けの手段ではないファンダムマーケ。作れるかな。
■著者インタビュー












