推しの是枝裕和監督が「家族と社会が壊れるとき」で対談していたケン・ローチさんの作品。是枝さんがいちばん尊敬している現役の映画監督の一人だそう。曰く「筋金入りの社会主義者」らしい。

病を患った主人公の大工のダニエルが、日本で言う雇用保険や福祉の制度から支援を受けようとしつつも、複雑かつ杓子定規な制度の狭間で満足な支援を受けられない中、貧困にあえぎながらも助け合いながら生きていこうとする。

シングルマザーとその子どもたちを助けたことから交流が生まれ、妻を亡くしたダニエルには家族のようにも映る。

構図は複雑ではなく英国の制度を知らなくても理解できるが、底流に流れているのは、社会的弱者へのまなざしと政府への怒り。その点は是枝作品にも通ずる点が多いと思う。

人間の尊厳を捨ててまで制度には頼らないとするダニエルとその行動は天晴だ。

映画.comのインタビューでケン・ローチさんは、「本作で起こる出来事と、日本でも起こっていることの間にある共通点に気づいていただければと思います。先進工業諸国ならどこでも、似た問題に苦しんでいるのではないでしょうか。政治的には、資本主義経済を支持する政府を持つ国々は、労働者階級を今いる場所に留まらせる手段を編み出します。貧しく、助けが必要な人々を痛めつけるシステムがその一例です。英国の政府はその残忍性を分かっていてやっています。その施策がどのような結果を招くか、政府は完全に認識していますし、日本にも同じ状況が見られるかもしれません。もしそうであれば、私たちは変化を求めるべきです」という。たぶんに政治的発言ではあるけれど、確かに今の日本でも同じ状況にあると思う。

監督のこうした観点とは別だが、同じような境遇にある市井の人たち同士の扶け合いの情景に私は心を打たれた。単なる市民的抵抗のみをアピールするのではなく、しっかりとした土台としての相互扶助もうまく描かれている。このところ相互扶助について考えることの多い私にはちょうどよいタイミングでの鑑賞となった。

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