話題の映画をAmazon primeで鑑賞。
渋谷区にある公衆トイレを世界のクリエイターが改修するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」。日本財団とファーストリテイリングの柳井取締役が出資し、当初は、日本財団・渋谷区・一般財団法人渋谷区観光協会が維持管理していた(現在は移管された渋谷区が維持管理)。
本作は、このプロジェクトによる映画化に賛同したドイツのヴィム・ベンダース監督が、トイレの清掃業務を担当する「東京サニテーション」の清掃員「平山」に役所広司をあてて撮ったもの。役所広司はこの作品で「誰も知らない」の柳楽優弥に続いてカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞している。
押上の安アパートにひとりで暮らし、清掃の勤務の日も休日も粛々と毎日のルーティンをかかさない。仕事には誠心誠意向かい合う。他人とのコミュニケーションを嫌がるわけでもなく、勤務の日は浅草駅地下の焼きそば酒場、休日は洗濯するコインランドリーそばのスナックで焼酎の水割りを飲む。自らすすんで話すことはなくても話しかけられたらきちんと反応する。
ルーティンが狂うできごともあって感情が乱されることもあるけれど、また落ち着いた日々を取り戻していく。
年代や経験、出身によってもかなり解釈に違いがでる映画だとは思う。ネタバレになるから作品を観られた後で観た方がよいけれど、監督のインタビューには平山は実存的な自覚をしている「僧侶」のイメージを持つとしている。インドのヴェーダーンタ哲学にある、日常生活においで全く誰にも知られないまま静かに内面に向かい、自己存在の源にとどまることとつながるようだ。私的にはこれを「全瞬間自覚」という。
本作品のキャッチコピーは、「こんなふうに生きていけたなら」。宜なるかな。
予告編
ヴィム・ベンダース監督「平山という男は、どこから来たのか」
役所広司インタビュー