話題のスタジオジブリ作品を久しぶりに映画館で観てきた。事前の告知はほぼなし、監督が若いころに読んで感動したという吉野源三郎著「君たちはどう生きるか」(岩波書店)から題名のみ借り受けた由で、子どもの頃、何となく読んだ記憶からすると、単なる倫理の話ではなく、社会性を帯びた意味での「生きる」ことが描かれるのかと思ったが、それほどこの著作には寄っていなかった。
映画のマーケティング的なことには興味がないが、ひとつ気づかされたのは、情報過多の時代にあって、作品を観たり、本を読んだり、食事に行ったりする際に、つい事前に情報を仕入れようとしていたなぁということ。口コミや専門家の評価を気にしないで素でアプローチすることがほんとに減ってしまった。
それはさておき、映画の感想と言えば、あいかわらず手描きの映像は美しくて過去作を彷彿とさせる場面が散りばめられていて、取りあえずジブリファンには楽しめるということと、VUCAな時代に絶望している(であろう)監督からの「それでも生き抜け」というメッセージではないかということ。
観る側がこの時代をどう生きるのか、深く考え続けていなければ、おそらく難解な映画という感想でとどまると思う(別にそれでもいいけど)。
対立と変容、コンパッション、脱成長、相互扶助、利他…。再び考えるきっかけをもらえた映画だった。
主題歌「地球儀」米津玄師