2023年の日本アカデミー賞の最優秀作品賞を含め8部門の最優秀賞を受賞した作品で気になっていたけどようやく鑑賞。原作は「マチネの終わりに」の平野啓一郎、監督はこれまで作品に触れたことがない方。淡々とした作調は秋の夜長にゆっくりと見るにはちょうどよかった。

地方の町で文具店を営むシングルマザーとお客さんが知り合って結婚、数年後に事故で夫が亡くなったことで、その男が全く別人になりすましていたことが発覚、知り合いの弁護士に調査を依頼する。

弁護士が調査する中で出会う人たちとの絡みや本人自身の出自や家族との葛藤などを描く中で、作者本人が自身の各作品で底辺に流している「分人主義」という考え方をこの作品でも前面に出している。

分人主義とは初めて聞いた。下にリンクを張った公式サイトでは以下のように定義されている。

「個人」は、分割することの出来ない一人の人間であり、その中心には、たった一つの「本当の自分」が存在し、さまざまな仮面(ペルソナ)を使い分けて、社会生活を営むものと考えられています。
これに対し、「分人」は、対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格のことです。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えます。この考え方を「分人主義」と呼びます。

https://dividualism.k-hirano.com/

サイトも見てみたが、なるほどねと思うことはあったけれど、それほどたいそうな考え方でもないように思える。ただ、本当の自分を探している人にとっては「すべての場面のあなたが本当の自分なんだよ」と肯定されることで救われる部分もあるのかもしれない。

映画に戻ると、亡くなった夫はある事件を理由に「違う人間になりたい」ために他人と入れ替わった。ミステリタッチではあるものの、驚くような展開ではない。むしろ役者の演技を味わう映画なのかもしれない。

ただ見て損はありません。

予告編

分人主義公式サイト

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