推しのいる生活」でも書いたように、映画監督の是枝裕和さん、脚本家の坂元裕二さんの作品はほぼコンプリートしていているので、この二人がはじめて組んだ映画「怪物」は自ずと期待が高まった。

もともと是枝さんはほぼすべての作品の脚本を自ら執筆していたが、お互いに尊敬しあっている由で、今回の作品ではじめて脚本を坂元さんにゆだねたそうだ。

残念ながら劇場では観る機会がなく、DVD化されてようやく作品を観ることができた。

地方都市のどこにでもある小学校で起こるいじめから事が発し、子どもの母親、教師、子どもたちと当事者それぞれの立場から同じシーンを三つの章に分けて描き直しながらストーリーが進められていく。

それぞれの主観に基づいて描かれるシーンは、真実が見方によって全く異なることをよく表している。それが人のいのちや人生に関わることであれば、取り返しのつかないことになっていく。インド思想の古典でもこの世はすべてが幻想であるという考え方があるが、実際、真実は人によって異なり、ひとつではない。そのことを深く取り上げていた。

事程左様にこの映画の真実も観る人に委ねられている部分が多い。最後を昇華と見るか、悲劇と見るか。下の対談を読む限り、制作側には自身の意図はあるようだが、観客の多様な読みを否定もしないとしている。

演者は申し分なくすばらしい。特に子役の二人は傑出している。二人とも日本アカデミー賞の新人俳優賞を取っている。

映像は綺麗で、劇場で見るのもよいが、自分にとってはどちらかと言えば一人で小さな画面でじっくり観た方がよいような映画だった。観終わった人とは盃を酌みかわしながらじっくりと語り合いたい。

是枝裕和監督と坂元裕二の特別講義

予告編

一般のお問合せ

メールフォームからお願いします。おりかえしご連絡いたします。

SNSのフォローやシェアをお願いします。

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう