最近は自分の贔屓のアイドルグループやタレントのことを「推し」というそうだ。グッズを揃えたり、出演する作品などをコンプリートしたり、「聖地巡り」と称して、ゆかりの地を訪ねたりする。自分の生活の糧というか、生きる励みにするほどになったり。

実際、息子の中学の先輩である人気YouTuber「コムドット」のゆかりの地として、近所のありふれたラーメン屋が聖地として長蛇の列になっている。

自分にはそこまでのめり込む人やモノがなかったので、推しのいる気持ちはよく分からなかったが、よくよく考えると、アイドルやタレント以外であれば、脚本家と映画監督に思い当たる人たちがいた。

脚本家は坂元裕二。

「東京ラブストーリー」「Mother」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」「Woman」「問題のあるレストラン」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「anone」「大豆田とわ子と三人の元夫」「花束みたいな恋をした」──。

言わずと知れた大脚本家で、あのユリイカの特集になるくらい。完全制覇とまではいかないけれど、2010年の「Mother」以降のテレビドラマや映画はほぼ全て見ているし、最近ではリアルな舞台まで見に行っている。

わが家ではテレビドラマを家族で見ることが多く、今クールは何を見るのか話し合う。旬の役者が出ていても視聴者をバカにしているんじゃないかと思えるようなプロットの浅い脚本もあって、「これなら父さんの方がうまく書ける」と冗談を言ったりしているが、坂元さんの場合は別。毎回襟を正して一言一句聞き逃さないように観ている。

その魅力は、セリフまわしはもちろん、掛け合いのテンポとか、登場人物の背景設定の深さなどいろいろあるが、プロットは書かないで「履歴書」という登場人物の過去を綴った資料をまず作るらしい。セリフについては、「脚本家 坂元裕二」という本のインタビューで「日常のダイアローグではできるだけ本当のことは言わない、気持ちを届けようとしない、核心には触れない、周辺のことばっかり喋っている、ってことをキープしながら書く」と話されている。日常の会話では確かに日本人はストレートに気持ちを伝えることは少ないこともあって実感がわきやすいのかもしれない。

脚本家 坂元裕二」(Gambit 2018年9月)
「脚本家 坂元裕二」に掲載しきれなかったインタビュー
ユリイカ「特集 坂元裕二」(青土社 2021年2月)

映画監督は是枝裕和。

まず「誰も知らない」ではまった。実際に起きた子ども置き去り事件をもとに育児放棄されたきょうだいたちが必死に生きる姿が胸を打った。主役の柳楽優弥君の演技があまりにも自然で、その後も出演作品を追っかけている。ドキュメンタリー出身だからか、パルム・ドールを取った「万引き家族」をはじめ社会性を持つ作品が多く、社会的発言もいとわない。

あらかじめ書いた台本にこだわらず、役者同士の間合いによってその場で書き換えることもあるそうで、子役の場合は台本すら渡さずその場でセリフを説明して子役自身の言葉を吐いてもらうらしい。

最新作「真実」は日仏共同製作でカトリーヌ・ドヌーヴ主演とあってこれまでの作風と違って驚いたが、テーマが「母と娘」であり、以下の対談を読んで納得がいった。

【是枝裕和監督×宮﨑あおい対談】母娘の間の嘘。こうしたかった気持ちは「真実」
是枝裕和×宮本信子×宮﨑あおい 母娘のすれ違いを描く

この二人はお互いに尊敬している由で、ブログで取り上げている人も多い。
坂元裕二×是枝裕和トークショー『ドラマの神様は細部に宿る』
“共時性”を持ち“個人的な”作品を生む是枝裕和と坂元裕二
是枝裕和監督×脚本家:坂元裕二が語る!
是枝裕和×坂元裕二対談を特別公開

このブログでも二人の作品を少しずつ取り上げていきたい。

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